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さらに過酷なミッションを教員に押しつける文科省

【第22回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■無謀な作戦で教員はさらに疲弊してしまう

 それでも、文科相をはじめとする文科省はこれらの指導を推奨する。しかも、10日付の通知には、「指導計画等を踏まえながら家庭学習を課し、教師がその学習状況や成果を確認し、学校における学習評価に反映することができる」とも記されている。つまり、休校中の家庭学習の成果を学習評価に加えろ、と言っているのだ。
その成果の把握の「方法例」として、通知は次のことを挙げている。

●ワークブックや書き込み式のプリントの活用
●レポートの作成及びそれに対する教師のフィードバック
●ノートへの学びの振り返りの記録
●登校日における学習状況確認のための小テストの実施

 これだけでも、教員の仕事量は格段に増える。そして、その結果が悪ければ教員の責任とされ、「家庭訪問の実施、電話の活用等を通じた教師による学習指導」が効果的に行われていなかったためだと非難されるのは火を見るよりも明らかだ。
では、それに対する十分なバックアップがあるかといえば、絶望的だ。2万人の学習指導員のための予算を確保した、と14日の記者会見で萩生田文科相は胸を張るが、全国には公立小学校だけで1万9,591校、中学校は9.421校あるのだ(※2018年現在『文部科学統計要覧』)。
つまり、2万人の学習指導員では、1校に1人だとしても足りていないことになる。

 しかも2万人は、予算が確保されているだけで、要員が確保できているわけではない。そのため萩生田文科相は、「全国の教職を退職された皆様のお力をぜひとも貸していただきたいと思います」と呼びかけている。はたして、この招集に応える教員OBがどれくらいいるものだろうか。2万人を集めるというのは、それほど簡単なことだとは思えない。

 仮に応じる教員OBがいたとしても「即戦力」になるのだろうか。初めて接する子どもたちを相手に、家庭訪問や電話での指導は無理なことである。子どもたちが提出するワークブックやレポートをチェックするにしても、担任教員とのリレーションシップがうまくいくとは限らない。むしろ、余計な気遣いや摩擦を引き起こすことが危惧される

 そもそも足りていない2万人の学習指導員とともに、家庭訪問や電話での指導を実行し、しかも学習評価として結果を求められるという過酷な作戦に、全国の教員は動員されてしまった。

 これはまるでインパール作戦に駆り出された、かつての日本兵士たちのようだ、というのは言い過ぎだろうか。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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